ワイマックス

大丈夫？ワイマックス実用化　次世代の高速移動無線


　■周波数帯・性能・サービス内容に疑念　関係各社の調整難航

　次世代の高速移動無線の本命とみられていた「ＷｉＭＡＸ（ワイマックス）」の実用化に向けた議論が混迷している。

　衛星無線システムとの干渉のため、ワイマックスへの割当が想定されていた周波数帯が大幅に縮小される可能性があるほか、高速移動しながらの通信性能が他のシステムに比べて劣るという見方も出ている。

　総務省では改めて各事業者を集めて、割当のあり方や利用法などを話し合う場を設けることも検討しており、来年７月の免許付与というスケジュールが遅れる可能性もありそうだ。

　ワイマックスは高速移動中も最大毎秒２０～３０メガ（１メガは１００万）ビット程度とＡＤＳＬ（非対称デジタル加入者線）並みか、それ以上のブロードバンド（高速大容量）通信が可能。すでに国際標準となっており、韓国では商用サービスがスタートしたほか、米国でも大規模な商用化計画が進んでいる。

　日本では今年２月から周波数２・５ギガヘルツ帯に導入する広帯域無線通信システムの技術的条件について議論が始まっているが、その最有力候補としてワイマックス導入の技術的条件が検討されている。ＮＴＴグループのほか、ＫＤＤＩ、ソフトバンク、イー・アクセスなど各通信事業者のほか、ケーブルテレビ会社などがワイマックスの導入を計画し、実験が行ってきた。

　順調に進めば、今年１２月に何社にどれくらいの周波数を割り当てるかを示す免許方針案を公表し、来年３月から割当希望事業者を公募、同７月までには割当先事業者を決定する予定。２００８年度にはサービスが開始される見通しだ。

　しかし、８月２９日、技術的条件を検討するなかで、隣接する周波数帯を衛星通信システム「Ｎスター」で利用するＮＴＴドコモが、ワイマックスとの干渉を避けるために両システム間に２０メガヘルツの空白地帯を設けることが必要と指摘した。

　そうなればワイマックスへの割当分が減ることになるため、ワイマックス導入を進める各事業者が一斉に反発。「５メガもあれば十分」（通信会社幹部）という声もあり、今後調整が必要な状況となっている。

　また、ワイマックスとは別の通信方式「ＩＥＥＥ８０２・２０」を推進する米クアルコムが、同方式に比べてワイマックスが高速移動中の通信性能に劣ることを強調。２・５ギガヘルツ帯にワイマックスだけでなく、「ＩＥＥＥ８０２・２０」の導入も認めるよう求めた。

　携帯電話の特許の多くを掌握するクアルコムは、次世代の無線通信でも自らの存在感を示したい考え。これに対し米インテルを中心にワイマックスを推進する通信会社や機器メーカー群がクアルコム包囲網を敷く展開となっている。日本を舞台に米半導体企業間の代理戦争が展開される形で、今後の動向が注目される。

　また、ワイマックスを移動体通信として携帯電話同様に扱うのか、それとも光ファイバーなど固定ブロードバンド通信の補完システムとして扱うのかサービスのあり方も定まらない状況。先行して商用サービスを開始した韓国ＫＴは固定通信事業者だ。

　携帯電話事業者は第３世代携帯電話の高速化サービスを進めており、「携帯事業者大手がワイマックスを本気でやる気があるのか」（通信会社幹部）と疑念を呈する向きもある。同省内でも、似たような無線システムを展開する携帯電話専業事業者にはワイマックス免許は不要とする意見が強い。

　携帯電話事業とともに固定通信も展開するＫＤＤＩは、ワイマックスについて「移動通信として検討しているが、固定通信の補完でやる考え方もありうる」（小野寺正ＫＤＤＩ社長）と柔軟な姿勢だ。

　しかし、それでは携帯電話専業のＮＴＴドコモは面白くない。Ｎスターとの空白地帯を２０メガヘルツも要求したドコモの主張も「嫌がらせではないか」（通信会社幹部）とする見方も出ており、調整は難航しそうだ。

　同省は２０１０年までのブロードバンド（高速大容量）通信の全国普及に向けて、２・５ギガヘルツ帯の免許割り当てはスケジュール通り行いたい方針。

　しかし、ワイマックスだけにするのか、どのような会社に、または何社に、どれだけの周波数幅を割り当てることが適当か、まだ見通せない状況。各社から異論が噴出した場合、検討の場を設けざるを得ない可能性もあり、年末までに免許方針案をつくることができるか微妙な状況となっている。（池誠二郎）

フジサンケイビジネスアイより

　どうなっていくのでしょう。難しそうですねぇ。